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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2604号 判決 1962年12月20日

栃木県足利市本城町二丁目一八四一番地

控訴人

清水清

右訴訟代理人弁護士

三輪自治

栃木県足利市本城町三丁目二一〇〇番地

被控訴人

足利税務署長

清水〓吉

右指定代理人

関根達夫

多賀谷恒八

星果

内藤彰三

右当事者間の贈与税決定処分取消請求控訴事件につき、当裁判所は、昭和三七年八月一四日終結した口頭弁論に基づいて、次のとおり判決する。

主文

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人が昭和三〇年三月三一日付で控訴人に対してなした昭和二九年分贈与税の取得財産価額の決定(被控訴人の昭和三一年六月一一日付再調査決定及び関東信越国税局長の昭和三三年六月一一日付審査決定によりその価額を金五十八万四千九百七十円と変更されたもの)のうち金四十六万九千九百七十円を超える部分はこれを取り消す。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを四分し、その三を控訴人の負担とし、その一を被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人が昭和三〇年三月三一日付で控訴人に対してなした主文第二項掲記の決定はこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否は、控訴代理人において「(一)訴外清水貞助は原審で主張したほかに、控訴人の親権者として控訴人所有の建物を他に賃貸し、昭和二九年四月二日訴外岡田キミから敷金一万五千円同年同月二八日訴外高橋松治から敷金二万円合計三万五千円を受領してこれを本件増改築の費用に充当した。(二)控訴人は昭和二九年五月一三日成年に達した。」と述べ、当審証人清水貞助の証言を援用し、被控訴代理人において「控訴人の前記主張事実の内、控訴人主張の金額が本件増改築費用に充当されたことはこれを争うが、その余の事実はすべて認める。」と述べたほか、原判決の事実摘示のとおりであるしからここに引用する。

理由

当裁判所の判断は、左記のとおり附加するほか、原判決の理由と同一であるから、ここに原判決の理由の記載を引用する。

(一)  原判決一六枚目表一二行目の「認められる。」の次及び同一七枚目裏八行目の「認められ、」の次にそれぞれ「以上の認定を左右するに足りる証拠はない。」を加える。

(二)  訴外清水貞助が控訴人の親権者として控訴人所有家屋を賃貸し、その敷金として訴外岡田キミから昭和二九年四月二日金一万五千円、訴外高橋松治から同年同月二八日金二万円を受領した事実は当事者間に争いがなく、当審証人清水貞助の証言によれば同人は右の金員を本件増改築の費用に充当し、控訴人が成年に達した日であることにつき当事者間の争いのない昭和二九年五月一三日までの間に右金員を各賃借人に返還したことはない事実が認められ、この認定を動かし得る証拠はない。したがつて、右の金員合計三万五千円は控訴人が成年に達したときに貞助においてこれを控訴人に返還すべき義務を負うものというべく、結局本件増改築費用金五十八万四千九百七十円の内貞助が控訴人に返還すべき金員として原審認定の八万円のほか右の三万五千円を差引いた金四十六万九千九百七十円が貞助が純粋に控訴人のため支出した費用であり、控訴人所有の建物の価額は貞助の贈与によつてそれだけ増加し、控訴人は右相当額の贈与を貞助から受けたものと認めるべきである。

そうすると貞助の贈与による控訴人の昭和二九年分取得財産価額は金四十六万九千九百七十円であるから、被控訴人が昭和三〇年三月三一日付で控訴人に対してなした主文第二項掲記の決定の内右の金額を超える部分は違法であつて取り消しを免れない。よつて、控訴人の本訴請求は右範囲内で理由がありその余は失当といわねばならないから、右の限度で原判決を変更することとし、民事訴訟法第九七条、第八九条、第九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大場茂行 裁判官 下関忠義 裁判官 秦不二雄)

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